「詰め物がすぐ外れる」
「治療したのにまだしみる」
「咬むとズキッと痛い」…
そんなお悩みは、歯の“接着”に問題があるかもしれません。
この記事では、接着力を劇的に高める新技術『IDS(即時象牙質封鎖)』について、歯科医が最新のエビデンスに基づきわかりやすく解説します。
1. IDS(Immediate Dentin Sealing)とは?
IDS(即時象牙質封鎖)とは、歯の治療で削った象牙質をその日のうちにボンディング材で封鎖する技術です。
特にセラミックインレーやクラウンなどの「間接修復(詰め物、被せ物)」で使われる処置で、接着力の低下を防ぎ、知覚過敏のリスクも軽減します。
2. IDSの重要性|なぜ行うの?
間接修復(詰め物や被せ物)では、歯の型取りをした後すぐに最終物を装着できず、1週間前後の仮封期間が必要になります。
その仮封期間がとても大切になります。
もう少し詳しくお伝えすると!!
歯というはエナメル質→象牙質→神経(歯髄)の順に構造をしています。
🔹 エナメル質は“バリア”
エナメル質は外からの刺激や細菌をシャットアウトする硬いバリアです。削られていなければ、たとえ唾液や仮封材が触れても、内部に影響はほとんどありません。
🔹 象牙質には“神経とつながる細い管(象牙細管)”がある
虫歯が進行して象牙質が露出するとどうなるか?
象牙質の中には「象牙細管(dentin tubules)」という無数の微細な管が走っており、その先は神経(歯髄)につながっています。
ここに問題が…
問題 | 原因と結果 |
感染リスク | 細管を通じて細菌が神経まで侵入する |
知覚過敏 | 外部刺激が細管を通って神経を刺激する |
接着力低下 | 汚染された象牙質は接着材が効きにくい |
🔐 IDSは“象牙質の扉をしっかりロックする処置”
IDS(Immediate Dentin Sealing)は、象牙質が露出したその場で、細管をボンディング材で封鎖する処置です。
これによって
- 神経への細菌感染を未然に防止
- 冷たい物がしみる知覚過敏を予防
- 接着材がしっかり効く清潔な状態をキープ
3. Pascal Magneらの論文で示された科学的根拠
出典:Journal of Dentistry 2005; 33(7): 511–519
著者:Pascal Magne, Tae Hyung Kim ほか
この論文で示されたポイント:
- IDSにより、仮封期間を経ても象牙質の接着力が落ちない
- むしろ接着強度が高まるケースもある
- 美しさ・耐久性を求める審美修復に最適
📌 結論:IDSは長期的な修復成功の鍵
4. IDSをするメリットとデメリット
メリット
接着力の向上 | 長期的に外れにくい詰め物に |
感染予防 | 象牙質への細菌侵入を防ぐ |
知覚過敏の予防 | 形成直後の痛みを軽減 |
長期安定性 | 補綴物の寿命を延ばす |
⚠️ デメリット・注意点
項目 | 内容 |
手技の煩雑さ | 手間が必要 |
保険適用外 | 自由診療での対応が多い |
熟練度が必要 | ボンディング材の選択・照射がポイント |
5. IDSを取り入れた治療の流れ
🦷 Step ①:初診・診断
検査・カウンセリング → 間接修復が適応か判断
🦷 Step ②:形成・象牙質露出
う蝕除去や形成処置 → IDSの準備
🦷 Step ③:IDS(即時封鎖)
ボンディング材で象牙質を封鎖 → 光照射
🦷 Step ④:仮封・補綴物作製
技工所で補綴物を作製 → 約1週間
🦷 Step ⑤:補綴物の装着
セラミックやインレーを本接着 → 美しく長持ち!
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🦷 Step ⑥:定期検診
3〜6ヶ月ごとのメンテナンス
6. IDSはどんな方におすすめ?
- セラミックインレー・クラウン予定の方
- 「詰め物が何度も取れる」経験のある方
- 美しさと機能性を両立させたい方
- 歯を長持ちさせたい(MI治療志向)の方
7. よくある質問(FAQ)
Q. IDSは保険でできますか?
→ 現在は自由診療での対応が基本です。
Q. IDSをしないとどうなる?
→ 汚染リスクが高まり、接着の不具合・外れやすさが増す可能性があります。
Q. 治療期間は?
→ 2回来院・1週間程度で完了するケースが多いです。
8. まとめ|IDSは「見えない努力」で歯を守る技術
IDSは小さな処置に見えて、最終的な治療結果の質を大きく左右する技術です。
エビデンスでもその有効性が証明されており、間接修復をより確実・長持ちさせたい方には必須とも言える手法です。
「どうせやるなら、接着力を最大限に活かす治療を」——
IDSはそのための、歯科医師の“ひと手間”です。
📚 出典・参考文献
- Magne P, Kim TH, Cascione D, Donovan TE. Immediate dentin sealing supports delayed restoration placement. Journal of Dentistry. 2005;33(7):511–519.
- 歯髄保護の診療ガイドライン2024
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✍執筆者情報
金子賢哉(かねこ けんや)歯科医師
藤が丘スマイル歯科 院長
日本歯周病学会 会員
日本保存学会 会員
日本歯科大学 卒業
※本記事は歯科医師の監修のもと、最新の臨床研究と技術に基づいて執筆しています。