【歯科医が解説】ドックベストセメント・3Mix治療は危険?|神経を残す最新治療MTAとの違いとは!?
「虫歯が深いけど、できれば神経を残したい…」
そんな方がインターネットで見かける「ドックベストセメント」や「3Mix-MP法」
実は、日本の歯科ガイドラインでは推奨されていない治療法です。
一方で、今注目されているのが、MTAを用いた科学的根拠のある「歯髄温存療法」です。
この記事では、MTAを使ったエビデンスに基づく歯髄温存療法と、推奨されない治療法との違いをわかりやすく解説します。
1.歯髄温存療法とは?
「歯髄温存療法」とは、虫歯が神経の近くまで進行していても、神経を取らずに保存する治療法です。
主な方法として以下があります。
- 間接覆髄:神経の近くまで虫歯を削り、保護材で覆って炎症を抑える
- 直接覆髄:神経が露出した場合に保護材で直接覆う
- 断髄:神経の一部だけを取り除き、残りを保存する
中でも注目されているのが、MTA(ミネラルトリオキサイドアグリゲート)という材料を使った治療です。
2.MTAが選ばれる理由|高い成功率と信頼性
日本歯科保存学会の『歯髄保護の診療ガイドライン2024』では、MTAを使用した歯髄温存療法が第一選択として推奨されています。
その理由は、以下のような臨床的メリットです。
- 2年以上の追跡調査で90%以上の成功率
- 神経の自己修復能力を促す
- 生体親和性が高く、安全性が高い
- 長期的に安定した経過が期待できる
従来の水酸化カルシウムよりも、神経を残せる可能性が高く、再治療のリスクも低いと評価されています。
3.【注意喚起】ドックベストセメントや3Mix法はなぜ推奨されないの?
ドックベストセメントとは?
抗菌作用がある銅を含むセメントで虫歯を除去せずに詰める治療。
→ 科学的な長期データが乏しく、成功率にもバラつきがあります。
3Mix-MP法とは?
抗菌薬3種を混ぜたペーストを虫歯に詰めて除菌を狙う治療。
→ 抗生物質の乱用による耐性菌リスクが懸念されており、ガイドラインでは非推奨とされています。
これらの治療は「削らない」「痛くない」といったキャッチコピーで紹介されがちですが、科学的根拠が十分とはいえず、再発や悪化のリスクもあるため注意が必要です。
*2025年に日本保存学会が注意喚起として発表しています。
4.受診時に確認すべきポイント
歯の神経を残したいと考えている方は、以下の点を歯科医院で確認してみましょう。
- MTAを使用した治療を行っているか
- 「ドックベストセメント」や「3Mix」をすすめていないか
- 最新のガイドラインに基づいた診療か
- 神経を取らずに済む可能性がどれくらいあるか
MTA治療は一部自費診療になるケースもありますが、歯の寿命を延ばすという点で非常に価値の高い選択肢です。
5.ドックベストセメントや3Mix法は実際どうか?
よくこのご質問を受けることがあります。
毎回答える内容としては…
『分からない。』ということです。
なぜならエビデンスがない治療のため、私自身その治療をすることがなく、それらの勉強をしっかりすることがないからです。
エビデンスのないものを患者様に提供することは、私の考えとしてはあまり考えにくく、当院の治療では行いません。
それらの治療をされた方が全く問題なく良好な経過を追っているのも拝見しているため、最悪の治療という訳ではないと思います。
ただ、自分が歯髄温存療法するなら、エビデンスのある保存学会でも推奨されているMTAを選択します。
いまは色んなことを調べられるようにもなっているため、あえてドックベストセメントや3Mixを使用した治療を受ける人もやる人も少なくなっているとは思います。
6.よくある質問(FAQ)
Q1. ドックベストセメントって本当に削らなくていいの?
A. 完全に削らないわけではありませんが、「虫歯をあえて残す治療法」です。
ドックベストセメントは、虫歯の一部を残したまま銅を含むセメントで封鎖し、虫歯菌を抑えるとされる方法です。
しかし、日本歯科保存学会や厚労省のガイドラインでは非推奨とされています。科学的根拠が不十分で、成功率や再発リスクにばらつきがあります。
Q2. 3Mix-MP法とは何ですか?安全なの?
A. 抗生物質を混ぜたペーストで虫歯菌を殺菌する方法ですが、安全性には疑問があります。
3Mix-MP法は、3種類の抗生物質(メトロニダゾール・ミノサイクリン・シプロフロキサシンなど)を混ぜ、虫歯に塗布する治療法です。
しかし、抗菌薬の局所使用による耐性菌リスクが報告されており、保存学会の2025年版注意喚起でも「推奨できない」とされています。
Q3. MTAってどんな材料?なぜ選ばれるの?
A. MTA(ミネラルトリオキサイドアグリゲート)は、神経を保護する高信頼性の材料です。
- 生体親和性が非常に高く、安全
- 自己修復能力(象牙芽細胞の活性)を促す
- 2年以上の追跡で90%以上の成功率(日本保存学会2024)
MTAは、科学的根拠に基づいて「神経を残す治療法(歯髄温存療法)」の第一選択とされています。
Q4. MTAを使った歯髄温存療法は保険適用されますか?
A. 精密な診断や材料を使う場合は自費診療(目安:3万円程度)となることが多いです。
※医院によって異なるため、事前のカウンセリングで確認が必要です。
当院では費用は33,000円
Q5. ドックベストや3Mixを受けてしまった…再治療は必要?
A. 経過が良ければ必ずしもすぐ再治療が必要とは限りません。
ただし、レントゲンや症状の確認が重要です。
再感染や痛み、違和感がある場合は、科学的根拠のある方法(MTAや根管治療)での再評価をおすすめします。
Q6. 歯の神経を残す治療は誰でも受けられますか?
A. 歯の状態によりますが、多くのケースで検討可能です。
- 神経がまだ生きている(生活歯)
- 大きな腫れや根尖病変がない
- 出血コントロールが可能 など
歯科医院での正確な診断(拡大視野・診査)が必要です。
Q7. どの歯科医院でもMTA治療は受けられますか?
A. いいえ、すべての医院が対応しているわけではありません。
MTA治療には、材料費・技術・診断機器が必要なため、導入していない医院もあります。
当院ではMTAを用いた歯髄温存療法を導入しており、無料LINE相談も受け付けています。
7.まとめ
神経を残すなら「信頼できる治療」を選ぼう
- 虫歯が進行していても、神経を残せる治療=歯髄温存療法が可能な場合がある
- MTAによる治療は高い成功率を持ち、ガイドラインでも推奨されている
- 一方で、ドックベストセメントや3Mix法は信頼性に乏しく非推奨
大切な自分の歯を守るためには、治療の選択肢について正しい情報を知ることが第一歩です。
「削らない治療」「痛くない治療」などの言葉に惑わされず、科学的根拠に基づいた選択をしていきましょう。
✅日本歯科保存学会の『歯髄保護の診療ガイドライン2024』について
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✅2025年版の歯髄温存療法の成功率とエビデンスなどについて
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✍執筆者情報
金子賢哉(かねこ けんや)歯科医師
藤が丘スマイル歯科 院長
日本歯周病学会 会員
日本保存学会 会員
日本歯科大学 卒業
※本記事は歯科医師の監修のもと、最新の臨床研究と技術に基づいて執筆しています。