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【専門解説&最新研究】神経を取った歯は“枯れ木”になる?割れやすさのウソ・ホント

「神経取るとすぐ割れる」「全部削って被せ物しないといけない?」

そんな話を聞いて不安になっていませんか?

実は、神経を取った歯は“破折”によって失うリスクが最も高いという衝撃事実があります。

この記事では、枯れ木説の誤解を解きつつ、歯を長持ちさせる“最新の治療法”を科学的データとともに丁寧に解説します。

 

この記事では、根管治療(神経を取る治療)を受けた歯は本当に弱くなるのか?という疑問を、科学的な根拠に基づいて、わかりやすく解説します。

1.枯れ木説は?神経除去で歯が弱くなるのか

答えは NO です。

1972年の研究(PMID: 4506724)によると、神経のある歯とない歯の水分量の差はたった7%で、歯の強度には臨床的に重要な違いはないと結論づけられています。

つまり、「神経を取った歯=乾燥してもろくなる」というのは、科学的には正しくありません。

しかし、実際は神経をとると歯はもろくなります。

2.メンテでも防げない!破折で歯を失う確率が一番高い

歯を失う最大の原因は歯周病です。

しかし、メンテナンス中での歯を失う最大の原因は神経取った歯が割れてしまうことです。

 

2021年、674名を5年以上追跡した日本人を含む研究(Kawaharaら)では、

  • 失った歯の91.7%が神経を取った歯
  • その62.1%が破折(縦根破折)による抜歯だった

 

つまり、神経をとるとメンテナンスに通っていても、破折は防げず、歯を失う最大の原因になっているのです。

 

神経取っても水分量は変わらないのに、なぜ歯が割れるなど失うリスクがあるのか??

 

3.削る範囲=破折リスク。どこを削るかが成否を分ける

歯が割れる原因は

「どこを削ったか」が重要

神経をとったことが原因ではないんです。

Reehらの研究(1989年、PMID: 2639947)によると、

歯の「削る位置」によって、その後の割れやすさが大きく変わることがわかっています。

では、割れやすさはどのくらい変わるのか?

神経取るだけ→-5%
咬む面のみ(咬合面のみ)→-20%
咬む面+片側の歯と歯の間まで→-45%
咬む面+両側の歯と歯の間まで→-63%

 

➡️ 歯の側面の壁(辺縁隆線)を削ることで、急激に歯が弱くなるのです。

一方で、神経を取るだけでは歯の強度はほとんど変わりません。

 

つまり、咬む面のみ削って神経を取った場合は

被せるより咬む面のみ埋める方が予後良好です。

 

歯と歯の間が虫歯で神経を取った場合はもうたくさん削って被せるしかないのか?

4.削らない治療「オーバーレイ」で破折から歯を守る

「出来る限り削りたくない。」という方におすすめなのが、

オーバーレイ(Overlay)

という歯をなるべく削らない治療法です。

▶ オーバーレイとは?

  • 削る量を最小限に抑え、歯の山(咬頭)を覆って補強する被せ物
  • 全部削る被せ物(クラウン)の場合歯質の削除で約70%喪失してしまいますが、オーバーレイだと約40%の削除で済みます。

▶ どれくらい持つの?(予後)

  • 5年生存率:約93〜95%
  • 10年でも91%が良好に機能
    (PMID: 27287305

👉つまり、神経を取った歯でも、長期間しっかり噛める状態を維持できる治療です。

5.前歯は表側エナメルが守る!削らない治療の活用

前歯では「表側のエナメル質」がポイント!

前歯の場合、唇側(表側)のエナメル質が歯の強さに大きく関係します。

ここが過剰に削られてしまうと、歯の構造が弱くなり、破折のリスクが上がります。

逆に後ろ側が虫歯で、表側が虫歯がなく場合に差し歯や被せ物にするのはむしろ歯を脆くしてしまうリスクがあります。

表側がほとんど健康の場合は削らないことが大切!

 

よくここでご質問あるのが。

逆に、表側が虫歯の場合で神経を取った場合は差し歯にしないといけないのかということ。

これも答えは NO です。

 

接着性の修復(例:ラミネートベニアなど)を適切に行うことで、天然歯と同等の強さまで回復できることがわかっているため、表側が虫歯で神経を取っても、歯を全て削って差し歯にする必要はないんです!

6.削らずに治療するデメリット

歯を削らずに治療するオーバーレイや接着性修復のメリットやデメリットはあるのか?

  • 保険が効かないことが多い
  • 接着が命なので、接着に何かエラーが起きると被せ物より取れやすいこともある
  • 咬む力が強い方は適応しない場合もある

7.神経は“歯のセンサー”のような存在

神経があることで、

  • 虫歯や炎症の「痛み」などのサインに早く気づける
  • 噛み合わせの違和感を感じやすくなる

といったメリットがあります。

できる限り神経を残すことは理想ですが、神経を取っても正しい治療をすれば歯の寿命は守れるのです。

8.よくある質問(FAQ)

Q. 神経を取った歯はどれくらい持ちますか?

→ オーバーレイや接着性補綴を使えば、10年以上持つことも珍しくありません。

Q. 削らない治療は誰でも受けられる?

→ 歯の残り方や噛み合わせなどの条件によります。まずは診断を受けましょう。

Q. 神経を残すメリットは?

→ 痛みなどの異常を早期に察知でき、歯を守るセンサーとして機能します。

9.まとめ

✅ 神経を取った歯は「枯れ木になる」は科学的に誤解

✅ 本当に大切なのは「削る場所と量」

✅ 歯を守るには「オーバーレイ」が効果的

✅ 正しい補綴処置で10年以上持つ可能性あり

✅ 神経は残せるなら残すのが理想。でも、取っても歯は守れる!

最後に

「なるべく削らず、歯を長く使いたい」

「神経を取った歯が心配…」

「神経取ったは歯は削らないといけないの?」

そんな方は、ぜひ歯を守るための最善の治療法を歯科医院で相談してみてください。

“枯れ木”ではありません。

正しい知識と治療で、神経を取った歯も長くしっかり機能します。

いつも最後まで見ていただきありがとうございます!

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✍執筆者情報

金子賢哉(かねこ けんや)歯科医師

藤が丘スマイル歯科 院長

日本歯周病学会 会員

日本保存学会 会員

日本歯科大学 卒業
※本記事は歯科医師の監修のもと、最新の臨床研究と技術に基づいて執筆しています。

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