はじめに
「神経を取ったから差し歯」と言われて戸惑っていませんか?
「前歯の神経を取ったから、差し歯にするしかないと言われた」
「でもできれば、自分の歯をできるだけ残したい…」
「本当に詰め物じゃダメなんでしょうか?」
このようなお悩みを抱えて、セカンドオピニオンとしてご相談に来られる方はとても多いです。
実際、私たち歯科医の現場でも、「神経を取ったから=差し歯」という説明がなされることがありますが……
実は、それはすべてのケースに当てはまるわけではありません。
本記事では、「唇側の歯がどれだけ残っているか」という本質的な判断基準と、
差し歯と詰め物それぞれのメリット・デメリット、最適な治療の選び方を丁寧に解説していきます。
1. 神経を取った歯は本当に弱くなるの?
よく言われるのが、
「神経を取ると歯がもろくなる」
というフレーズですが、これは半分正解、半分誤解です。
実際には、神経を取っただけで歯が極端に弱くなるわけではありません。
問題は、その後に行う治療でどれだけ歯を削るかです。
とくに前歯では、「唇側(表側)のエナメル質」が歯の強度維持に大きく関わることがわかっています。
この点については、こちらの記事でも詳しく解説しています👇
👉気になる方はこちら
神経を取った歯は本当に弱くなるのか?意外と知られていない事実を記載しています。
2. 唇側の歯が残っていれば、差し歯にしなくてもよいことがある
ここが非常に重要なポイントです。
前歯の唇側のエナメル質がしっかり残っていれば、差し歯にせず、詰め物や接着修復で対応できる可能性が高くなります。
最近の研究では、
- 唇側の歯が残っている
- 接着修復を行う
→ 歯の剛性(ゆがみにくさ)は天然歯に近いレベルまで戻る
という報告もあります。

参考文献:
Maane P. Bonded Porcelain Restorations in the Anterior Dentition: Quintessence Int 1999:30:661-72
つまり、残せる歯質をしっかり評価すれば、差し歯を回避できるケースも多いのです。
3. ただし「噛み合わせ」が強い場合は注意
一方で、「唇側が残っていれば大丈夫」と単純に言い切れないのもまた事実です。
✔ 以下のような方は、差し歯を選択した方が良いこともあります:
- 強い噛み合わせ(歯ぎしり・食いしばり)
- 前歯に大きな力がかかる咬合関係
- 何度も詰め物が外れている・欠けている
このような場合は、歯を守る目的で補強性の高い差し歯が適していることがあります。
4. 逆に「差し歯の方がよい」ケースとは?
以下のような場合は、差し歯による全体的な補強が必要になる可能性が高くなります。
❌ 唇側も虫歯で削れている場合
- エナメル質がほとんど残っていない
- 接着面が少なく、詰め物が脱離しやすい
このようなケースでは、詰め物での修復は不安定になる可能性があるため、
差し歯で歯全体をカバーする方が長期的に安定します。
5. 差し歯 or 詰め物の判断ポイントまとめ
| 状態 | 治療法の目安 |
| 唇側の歯が残っている | 詰め物・ベニアなどの接着修復 |
| 唇側も大きく削れている | 差し歯(クラウン) |
| 噛み合わせが強い | 差し歯で補強することを検討 |
| 見た目を重視したい |
状態によりベニア or セラミッククラウン |
6. よくある質問(FAQ)
Q1. 神経を取ったら、差し歯にするしかないんですか?
必ずしもそうではありません。唇側の歯がしっかり残っていれば、詰め物やベニアで修復できるケースもあります。
Q2. 見た目を自然にしたいのですが、差し歯でもキレイになりますか?
はい。最近のセラミッククラウンは自然な色調で作ることができ、見た目も非常に美しく仕上がります。
Q3. 差し歯にすると歯茎が黒くなるって本当ですか?
金属の土台を使うと黒ずみが出ることがありますが、メタルフリーの素材を選べばリスクは減らせます。
Q4. 詰め物と差し歯、どっちが長持ちしますか?
状況によりますが、どちらも10年以上持つ可能性があります。重要なのは、残っている歯の状態と噛み合わせです。
Q5. どう判断すればいいかわからないときは?
まずは歯科医院で状態をしっかり診てもらいましょう。セカンドオピニオンも含め、複数の選択肢を提案してくれる歯科医に相談するのが安心です。
7. まとめ|神経を取ったからといって、あきらめないでください
「神経を取ったから差し歯しかない」と言われても、実はまだ選択肢があるかもしれません。
- 唇側の歯が残っていれば、詰め物で済む可能性あり
- 噛み合わせや歯の状態によっては差し歯が必要な場合もあり
- 重要なのは、歯の状態を見極めたうえで“最適な方法”を選ぶこと
📣 もし迷っているなら、まずはご相談ください
当院では「できるだけ歯を削らず、できるだけ歯を残す」ことを大切にしています。
見た目・機能・将来性をバランスよく考えた治療プランをご提案します。
「差し歯しかないと言われたけど、本当にそれでいいのかな?」
そんな疑問をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。
藤が丘スマイル歯科ご紹介
藤が丘スマイル歯科
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✍執筆者情報
金子賢哉(かねこ けんや)歯科医師
藤が丘スマイル歯科 院長
日本歯周病学会 会員
日本保存学会 会員
日本歯科大学 卒業
※本記事は歯科医師の監修のもと、最新の臨床研究と技術に基づいて執筆しています。