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2025年版|歯髄温存療法の成功率とエビデンス|根管治療を回避する最新治療とは?

【歯髄神経温存】

「虫歯が深くて、神経を取るしかない…」そう言われたことはありませんか?

実は、神経を残すことで歯の寿命を延ばす最新治療が存在します。それが「歯髄温存療法(VPT)」です。

特にMTAという薬剤の登場で、90%以上の成功率が報告されています。

本記事では、歯科医師が根管治療を回避できるかもしれない治療法をやさしく解説します。

目次

1.歯髄温存療法(VPT)とは?|抜髄を回避する最新治療
2.歯髄温存療法の種類と適応症
3.【最新エビデンス】MTAを使った歯髄温存療法の成功率は?
4.メリット・デメリット(根管治療との比較)
5.どんな人におすすめか?
6.治療の流れ(診断→治療→経過観察)
7.実際の治療手順
8.症例
9.FAQ
10.まとめ

 

1.歯髄温存療法(VPT)とは?|抜髄を回避する最新治療

歯髄温存療法(Vital Pulp Therapy: VPT) とは、むし歯や外傷による歯髄の炎症が軽度である場合に、歯髄(神経)を可能な限り残し、歯の寿命を延ばす治療法 です。

歯髄保存療法や歯の神経を残す治療とも言います。

従来であれば抜髄(神経を取る処置)が選択されていたケースでも、適切な診断と治療を行えば、歯髄を保存できる可能性があります。

特に、MTA(Mineral Trioxide Aggregate) の登場により、歯髄保存の成功率が向上しており、現在では多くの研究でその有効性が報告されています。

 

2.歯髄温存療法の種類と適応症

(1)直接覆髄法(Direct Pulp Capping)

• 適応症:ごく小さな露髄(神経の露出)があるが、炎症が軽度な場合

• 治療法:MTAやカルシウム水酸化物製剤を使用し、露髄部分を保護

(2)間接覆髄法(Indirect Pulp Capping)

• 適応症:象牙質の深部までむし歯が進行しているが、歯髄は露出していない場合

• 治療法:むし歯を除去し、歯髄を刺激しないような薬剤で覆う

(3)断髄法(Pulpotomy)

• 適応症:歯髄の一部に炎症があるが、根尖部の歯髄は健康な場合

• 治療法:炎症がある歯髄の一部を除去し、残った健康な歯髄を保護

 

3.【最新エビデンス】MTAを使った歯髄温存療法の成功率は?

近年の研究では、MTAを使用した直接覆髄法および断髄法の成功率は80〜95%と報告!

従来の水酸化カルシウム製剤よりも高い成功率を示すことが分かっています。

▼ 代表的な研究データ(PubMed引用付き)

• Bogen et al.(2008)

MTAを用いた直接覆髄(direct pulp capping)において、約5年間で94.9%の高予後が確認されています。

 ▶ PubMed: 18310735

 

• Elmsmari et al.(2021)

MTAを用いた直接覆髄は、従来の水酸化カルシウムより高い成功率を示し、6か月〜3年にわたって90%前後の安定率が確認されています。

 

• Taha & Khazali(2017)

MTAを使用した断髄(partial pulpotomy)における2年間の成功率は90%超と報告されており、特に慢性症例でも安定した予後が得られています。

▶ PubMed: 28673494

 

これらのデータは、適切なケース選択と治療手技がなされれば、抜髄せずに歯髄を保存できる可能性が高いことを示しています。

 

4.メリット・デメリット(根管治療との比較)

メリット

  • 歯の寿命を延ばすことができる
  • 歯の強さを保ち、将来的に歯の健康度を保てる
  • 割れにくい・病気になりにくい歯を維持できる
  • 来院回数を減らすことができる

デメリット

  • 自由診療になる
  • 1回にかかる診療時間が長い
  • 成功率が100%ではない

 

5.どんな人におすすめか?

歯髄温存療法が適しているケース

✅ むし歯が神経に近いが、強い痛みがない

✅ 歯髄の炎症が軽度で、X線で異常が見られない

✅ 神経を保存することで歯の寿命を延ばしたい

 

適応外となるケース

❌ 自発痛(何もしていないのに痛む)が強い場合

❌ X線で歯髄壊死や根尖病変が確認される場合

❌ すでに歯の一部が大きく破壊されている場合

 

6.治療の流れ(診断→治療→経過観察)

1.診断(X線・冷診テスト・電気診などを実施)

2.むし歯の除去・歯髄の状態確認

3.適切な材料(MTAなど)で覆髄・断髄

4.修復処置

5.定期的なフォローアップ

7.実際の治療手順

①診査診断

神経を残せると診断したら治療を進めていきます。

⬇️治療前の状態

むし歯が大きく、歯が欠けてしまっている状態です

②ラバーダム防湿

ラバーダム防湿を行い、無菌的な環境にします。

③むし歯除去

むし歯の取り残しがないように『むし歯検知液』を使用し、取り残しのないようにしていきます。(*青い部分がむし歯が残っている部分)

④神経の露出

神経が見えてきたのでむし歯で感染した神経のみを除去します。

⑤お薬の貼薬

完全な神経のみになったら、MTAというお薬を入れます。

⑥詰め物

その後、問題なければ当日または、後日に詰め物を詰めてお終いになります。

8.症例

主訴 歯に穴が空いた
治療期間 1ヶ月
治療費 ¥33,000
治療内容 むし歯が大きく、神経を残す治療(歯髄温存療法)を行い、神経を残しました。
治療のリスク 治療後に痛みが出ることがあります。また、痛みが強くでる場合は神経を取る治療に移行することもあります。

9.歯髄温存療法(VPT)に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 歯髄温存療法とは何ですか?

A1.歯髄温存療法(Vital Pulp Therapy: VPT)は、虫歯や外傷などで歯の神経が部分的に炎症している場合に、神経全体を取らずに一部だけを残すことで歯の寿命を延ばす治療法です。特にMTAという材料を使うことで、高い成功率が期待できます。

Q2. 歯髄温存療法と根管治療は何が違いますか?

A2.歯髄温存療法は神経を残す治療、根管治療は神経を完全に除去する治療です。歯髄を残すことで、歯が強く、長く持ちやすくなります。一方、根管治療は感染が重度な場合に選択される確実な処置です。

Q3. 歯髄温存療法の成功率は?

A3.使用する材料や方法により異なりますが、MTAを用いた直接覆髄法では成功率91〜95%、断髄法でも約90%以上の成功率が報告されています(例:PubMed: 18310735, 28673494)。

Q4. 痛みがある場合でも歯髄温存療法はできますか?

A4.軽度の痛みや刺激痛であれば可能な場合もありますが、「ズキズキする持続痛」や「自発痛」がある場合は、不可逆性歯髄炎が疑われ、根管治療の適応となることが多いです。

Q5. 自費診療ですか?保険は効きますか?

A5.MTAなどの高品質材料を使用する場合、自由診療(保険外)となることが多いです。

当院での費用は3万+税込

Q6. 治療時間や通院回数はどれくらいですか?

A6.1回〜3回の治療で完了するケースが多く、治療自体は45分〜1時間程度で終了することが一般的です。その後の経過観察は数ヶ月おきに行います。

Q7. 再発や失敗のリスクはありますか?

A7.完全な成功率は保証できませんが、材料・技術・術後管理が適切であれば高い確率で歯髄を維持できます。治療後も定期的なフォローアップが大切。

10. まとめ

歯髄温存療法は、神経を守ることで歯の寿命を延ばす画期的な治療法 ですが、適応条件の見極めが重要です。

「自分の歯が歯髄温存療法の適応かどうか知りたい」場合は、専門的な診断が不可欠 です

まずは、お近くの歯科医院に相談してみましょう。

歯髄温存療法の症例をチェック 

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✅日本歯科保存学会の『歯髄保護の診療ガイドライン2024』について

⇒こちら!

 

いつも最後まで見ていただきありがとうございます!

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✍執筆者情報

金子賢哉(かねこ けんや)歯科医師

藤が丘スマイル歯科 院長

日本歯周病学会 会員

日本保存学会 会員

日本歯科大学 卒業
※本記事は歯科医師の監修のもと、最新の臨床研究と技術に基づいて執筆しています。

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