歯周病で抜歯と診断された方
健康な骨の状態と
歯周病の状態の比較
まず、歯周病がどのような病気かと言いますと、一言で言うと『骨の病気』です。歯の支えとなっている骨が失われていくことで、歯がぐらつくなど大きな影響を及ぼします。
上記の写真は健康な骨の状態(左)と歯周病の状態(右)を左右で対比した模型になります。
歯周病の状態では、骨の支えが少なくなり、骨の表面も非常にボコボコとした形状になることが多くなります。その結果、細菌が定着しやすくなり、炎症はさらに強くなるという悪循環に陥ります。骨の支えがないと歯の動揺などが徐々に出てきます。
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健康な状態
健康な状態では、このように歯の全周にわたって骨の支えがあり、骨の表面は平らな形状をしています。
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歯周病の状態
それに対して、歯周病の状態では、骨の支えが少なくなり、骨の表面も非常にボコボコとした形状になることが多くなります。その結果、細菌が定着しやすくなり、炎症はさらに強くなるという悪循環に陥ります。ちなみに歯の表面に付いている黒い付着物は歯石で、実際にこのように歯ぐきに隠れたところで歯石が沈着し、炎症の原因になっていることが多いです。
このように重度歯周病の場合には、抜歯を考えなければいけないこともあります。
理由は、そのような歯を残すことで、歯周病の細菌にとって心地よい場所を与えることになり、その歯の周りの健康な骨までも大量に溶けてなくなってしまったり、口臭がキツくなったり、お口から全身へ悪影響を及ぼすなど様々な不具合が起きてしまうからです。
*抜歯基準のエビデンスとしては、
下記の通りになります。
- 対症療法を行っても,過度の動揺により痛くて噛めない結果,回避性咀嚼を行ってしまう場合
- 十分なデブライドメント(細菌除去)ができない,あるいは暫間固定ができないほど進行した歯周炎
- 治療中頻繁に急性膿瘍が生じ,広範囲の歯周組織破壊の原因となる可能性がある場合
- どのような治療計画を立案したときにも,利用価値が見出せない場合
*歯周病患者における口腔インプラント治療指針およびエビデンス2018 日本歯周病学会から引用
歯周病症状の段階について
軽度歯周病
| 見た目 | 歯茎が腫れ、色が赤紫で触るとすぐに出血します |
|---|---|
| 痛み | 痛みはほとんどなく、違和感程度です |
| 日常生活の支障 | 歯ブラシをする時に、出血がでるようになります |
中等度歯周病
| 見た目 | 歯茎が下がり、歯が長くなったように見えます |
|---|---|
| 痛み | 固い物などを噛むと、痛いと感じるようになります |
| 日常生活の支障 | 歯がグラグラし始めて、硬いものが噛めなくなってきます また、歯が浮いたような感じがしてきます |
重度歯周病
| 見た目 | 歯茎が下がり、歯の根元の方まで見えてきます 状態が悪いと、歯茎から膿がでてきます |
|---|---|
| 痛み | お食事のときや、何もしていなくても痛みや歯茎が腫れたりしてきます |
| 日常生活の支障 | お食事の際に痛みを伴うなど、日常生活にも支障をきたすレベルになってしまいます |
他院で抜歯が必要と
診断された場合
進行した重度歯周病の場合『抜歯』と歯科医師から告げられることがあります。
しかし、当院では重度歯周病の治療、歯周組織再生療法の経験が豊富な院長が歯周病治療を行います。エビデンスのある診断・治療を行いますので、歯を残せる可能性も高いという自負があります。本当に抜歯しか方法がないのか、なんとか残せる方法がないのかなど、お悩みをお持ちの方は是非当院にご相談ください。
抜いた歯は、二度と元に戻りません!!
抜歯をした場合の
メリット・デメリットについて
メリット
- 感染源が取り除けるため、炎症をなくすことができる 抜歯をすることで、感染源など原因を確実に取り除けるので、痛みを改善することができます。また、感染源を取り除けるため、周囲の悪影響を最小限にできます。
デメリット
- 抜歯をするので一定期間(1週間ぐらい)の痛みを伴う 抜歯中は、麻酔をするため痛みは基本的にありませんが、治療後から1週間程度痛みを伴うことがあります。
- 歯を失い、その後に治療方法を考えなければならない 歯を失った場合、そのまま放置してしまうと後から取り返しがつかなくなることもあるので、抜歯する前に治療方法を決める必要があります。
- 失った歯に人工の歯を入れる必要がある 歯を失った場合は、歯に代わる人工な物を入れる必要があります。
入れ歯、ブリッジ、インプラントなどのいくつか選択肢がありますが、いずれの選択肢でも当然費用がかかります。
治療方法によっては残った歯に負担が掛かり、痛みが出ることや将来さらに歯を失うリスクもあります。1本失うことで、他の歯に負担がかかり、またさらに1本失いドミノ倒しのように負の連鎖が始まってしまいます。
歯を残す治療を選択した場合の
メリット・デメリットについて
歯を抜いてしまうと、人工な物で置き換えないといけません。
現代の医療により、ご自身の歯に近い治療法も選択できるようになりました。
しかしそれでも、ご自身の歯を残すメリットは大いにあります。
メリット
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自分の歯が残っている幸せ
を抜くというは、簡単なことではありません。
可能な限り、歯を残すように治療して、ご自身の歯を長く使っていただくことは、患者さんの精神面でもとても大切なことです。 -
『歯根膜』の有無
歯根膜とは、歯の根っこと歯を支えている骨の間にある薄い膜のことをいいます。簡単に言うと、歯の根っこを覆っている膜です。厚みは0.2~0.3ミリほどしかありませんが、 実は歯にとても重要な役割をしています。
この歯根膜というのは、大きな役割が2つあります。
1.触覚を伝えるセンサーの役割
噛んだ時に歯にかかる圧を感じ取る、センサーの働きをしているのです。簡単に言ってしまえば、歯ごたえを感じる器官、ということですね。
2.クッション材の役割
お食事をした時に噛んだりする時には、歯はわずかに沈んだり、ゆれたりしています。しかし、歯根膜があることで、歯にかかる力をうまく逃がして、過度な力が歯にかからないようにしているのです。
この大事な歯根膜は、”人工の歯にはなく” ご自身の歯にしかありません。 - インプラント・入れ歯・ブリッジになる時期を遅らせることが出来る インプラント・入れ歯・ブリッジなどの人工物は一生もつというわけではなく、お口の中に入れた瞬間から劣化が始まってしまいます。そのため、極力歯を残して、インプラント・入れ歯・ブリッジになる時期を遅らせるということは、とても大切です。
デメリット
- 周囲の健康な歯にも悪影響を及ぼす可能性がある
- 疼痛、腫れなどの急性症状が起きる可能性がある
- 常に残した歯を気をつけて生活をしなければならない
重度歯周病の方で
歯を残したい方へ
重度歯周病でも、
歯を抜かずに残す方法があります。
それは、『歯周再生療法』と言います。
歯周病で痩せて失われた歯の周囲の骨等を再生する治療法で歯周外科治療の一つです。
歯周病治療により、進行を止め、歯肉の状態を改善する事は可能ですが、一度失われた骨を元の状態に戻すことはできません。それを元の状態に戻すための治療になります。
歯周再生療法とは
歯周再生療法とは、歯の周囲の失った骨等に『エムドゲイン』という薬剤と、骨を補填する材料を注入し、骨を再生する治療になります。
エムドゲインという薬剤の主成分のタンパク質は、子供の頃に歯が生えてくる時に、重要な働きをするタンパク質の一種と同じなため、人体にも安心して使える材料になっています。また、エムドゲインは世界の40ヶ国以上で行われており、日本国内では2002年に厚生労働省の認可を受けるなど、高い安全性と多くの症例実績があります。
さらに約20年経過していますが、200万もの症例のうち起因すると思われる副作用の報告は一件もありません。
歯周再生療法の進め方
再生療法の術式はシンプルで、歯肉を注意深く剥離し歯根面に付着した歯石などの汚染物質の除去後、速やかに上記薬剤を塗布し縫合します。歯肉にダメージを与えずに剥離縫合するため、非常に繊細な手術になります。
- 診査診断 口腔内診査、レントゲン撮影等により、歯を残せるのか適応となるのかを診断します。
- 説明 歯周再生療法の適応と診断した場合、歯周再生療法について説明を行います。期間、回数、費用など事細かにお伝えします。
- 歯ぐきの切開 麻酔をし、手術部位の歯ぐきを切開します。
- 感染した組織の除去 露出した歯のについた歯垢や歯石など、感染源を丁寧に取り除きます。
- 骨を再生するお薬の注入 歯周組織を再生させるための薬を注入します。
- 切開した歯ぐきを縫合 切開した歯ぐきを元の位置へ縫合します。
- 抜糸 歯ぐきを縫合した糸を取ります。
- メンテナンス 治療した部分はとても繊細なため、メンテナンスをしっかりと行います。
自費の歯周病外科治療
(歯周再生療法)
| 費用 | 治療歯1本につき70,000円+税 |
|---|
治療のメリットとデメリット
治療のメリット
- 自分自身の歯を使い続けることができる
- 歯周病をなくし、再発しないようにすることができる
- 歯周病によって失われた骨の再生
- 歯の動揺が減少
治療のデメリット
- どのような症状においても適用できるわけではない
- すべての骨を再生できるわけではなく、再生できる量は人によって差がある
- 骨の再生にはある程度の時間が必要
当院が大切にしていること
当院では可能な限り、歯を保存できる条件であれば患者さんに十分説明を行い、歯の寿命が他の歯に比べて短い可能性があることなどをご理解とご納得をいただいてから治療を進めるようインフォームドコンセント(説明と同意)を大切にしております。
治療は患者さんのご希望のみを尊重しすぎてもいけませんし、歯科医師側の意見の押し売りでもいけないと思います。現在の状況、これから起こり得るであろう予後、それらに対しエビデンスのある治療方針をいくつかご提示し、患者さんと歯科医師とで意見を擦り合わせ納得いく形で治療をすすめていくことがお互いにとってより良い関係を築けるかと思っております。
疑問点や気になることなどなんでもご相談ください。
ご相談、ご興味ありましたら、ぜひお問い合わせお待ちしております。
歯を残す治療の症例
治療前
治療後
| 主訴 | 上の前歯がよく腫れる |
|---|---|
| 治療期間 | 1~2ヶ月 |
| 治療費 | ¥77,000(税込) |
| 治療内容 | 歯周再生療法にて、歯周病で失った骨を再生しました。 |
| 治療のリスク | 100%成功するものではなく、適応出来ないケースもあります。 |
よくある質問
Q.治療期間はどのくらい
かかりますか?
A.症状の進行度や治療内容によって異なりますが、軽度〜中等度の歯周病であれば1〜3ヶ月程度、進行して骨の再生治療などを行う場合は3〜6ヶ月ほどかかることがあります。歯周病は一度で完治する病気ではなく、治療後の定期的なメンテナンスが再発防止に欠かせません。「治して終わり」ではなく「守り続ける」治療が大切です。
Q.抜かずに治療した歯はどれくらい
もちますか?
A.正しく治療と管理が行われた場合、10年以上維持できるケースも多く報告されています。特に、拡大鏡を使った精密な清掃・感染除去と、歯を支える骨・歯肉の再生療法を組み合わせることで長期的な安定が期待できます。ただし、治療後にプラークコントロールが不十分だと再発しやすく、定期的なクリーニングと噛み合わせの調整が重要です。
Q.抜かずに治療する場合の注意点は
ありますか?
A.歯を残すには初期の正確な診断と感染コントロールが最も重要です。歯周ポケットが深い場合、歯周外科処置(フラップ手術)や歯周再生療法が必要になることもあります。治療後もセルフケア+定期的なプロケアを継続することが長持ちの鍵です。「残す治療」は時間と丁寧さが必要ですが、結果的にインプラントよりもご自身の歯で咬める期間を延ばせる可能性があります。
Q.歯を残す治療は誰でも
受けれますか?
A.歯根の亀裂や極端な動揺がない場合は残せる可能性があります。ただし、歯を支える骨が完全に失われているケースや、根が割れている(歯根破折)場合は保存が難しくなります。CT撮影などの精密検査による診断が欠かせません。当院では拡大鏡を用いて、歯根の状態・骨量・清掃可能性を詳細に確認したうえで治療方針を判断します。
Q.歯を残したい場合どんな治療法が
ありますか?
| 歯周基本治療 | プラーク除去・歯石除去・ブラッシング指導 |
| 歯周外科治療(フラップ手術) | 深い歯周ポケット内を直接清掃し、炎症を除去 |
| 再生療法(エムドゲイン・骨補填材) | 失われた骨を回復させ、歯の支持力を高める |
| 動揺歯の固定 | 歯揺れている歯を隣の歯と連結し安定化 |
| 意図的再植・移植 | 根の治療を行い、位置を変えて再植または移植することで保存 |
| 補綴処置(接着性ブリッジなど) | 抜歯後も削る量を最小限に、見た目と機能を 回復 |
Q.なぜ歯周病になると抜歯に
なるのですか?
A.歯周病は歯を支える「骨」が溶ける病気です。骨が大きく減ると歯が支えられず、揺れ・噛めない・膿が出るなどの症状が起こり、最終的に抜歯が必要になることがあります。ただし、進行度によっては抜歯を回避できるケースも多いため、早期の精密検査が重要です。
Q.痛みがないのに抜歯と言われました。なぜですか?
A.歯周病は「静かに進行する病気」で、痛みが出る頃には重度になっているケースが多いためです。痛みの有無と残せるかどうかは一致しません。レントゲン・CTで骨の量を確認したうえで判断します。
Q.他院で抜歯と言われましたが、
セカンドオピニオンは受けても良い
ですか?
A.もちろん可能です。特に「重度歯周病」「グラつきのある歯」は、医院によって残せる可能性の判断が異なることがあります。拡大視野下による精密診断を行うことで、残せる可能性が見つかることもあります。
Q.グラグラの歯でも残せることは
ありますか?
A.動揺があっても、
- 感染除去
- 動揺歯の固定
- 再生療法
を組み合わせることで、改善するケースがあります。ただし、歯根破折がある場合は保存が難しくなります。
Q.再生療法はどんな場合に
必要ですか?
骨が部分的に失われている(垂直性骨欠損)場合に、エムドゲインや骨補填材を用いて失われた骨の回復を目指す治療です。全てのケースで必要ではありませんが、適応を見極めることで歯の寿命を延ばせます。
Q.喫煙は治療結果に影響しますか?
A.はい。
-
喫煙者は
- 歯周病の進行が早い
- 治療の成功率が下がる
- 再生療法の効果が出にくい
ことが報告されています。
禁煙と治療を並行すると、治療効果は大きく改善します。
Q.歯周病は再発しますか?
A.はい、歯周病は生活習慣病のため、再発の可能性があります。
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ただし、
- 3〜4ヶ月ごとのメンテナンス
- 正しいセルフケア
で再発率を大きく下げられます。
Q.歯周病はどのくらいの人がなる
病気なの?
A.35歳以上の日本人の約80%が歯周病に罹患していると言われています。(厚労省)自覚がないうちに進行するため、早期発見が重要です。
Q.若い人でも歯周病になりますか?
A.なります。
特に「侵襲性歯周炎」は若年層でも急速に進行します。
家族歴がある方は注意が必要です。